ちょっぺこ日記

日々雑感や本の感想、息子の不登校のこと、自分の病気のこと(癌やパニック障害とか)等をつぶやいています。

『凍りのくじら』辻村深月を読み、またしても涙してしまった。

 先月、辻村深月さんの『かがみの孤城』という本を読み、感動したという記事を書いたのですが、同じ作家さんの本を他にも読んでみたいなと思い、今回は『凍りのくじら』という本を読みました。

 ネットで検索していると、どうも辻村さんの作品は作品同士でリンクしているらしく、読む順番を間違えると面白さが半減してしまうらしいです。『凍りのくじら』を最初に読むといいらしいので、とりあえず『凍りのくじら』から読んでみることにしました。

(『かがみの孤城』という作品とは、リンクしていないようでした。多分)。

 

 

孤独を抱えた主人公~「少し不在」~

 主人公は有名進学校に通う少女、芦沢理帆子。頭がよく、飲み会で知り合った遊び仲間や、同じ高校の優等生の子や、一人孤立している子といったタイプが違ったどんな相手とも、うまく立ち回って付き合っていけている理帆子だが、自分自身のことを「少し・不在」と考えいる。どの場所にも属していないという孤独を抱えた理帆子の前に、別所あきらという一人の青年が現れ、少しずつ打ち解けていくのだが……。

 大まかなあらすじはこんな感じです。理帆子は頭はいいのだけど、他人のことを「少しナントカ」と上から見下している部分があり、誰も本当の自分を知らない…と孤独を抱えています。そんな彼女に訪れるちょっと不思議な物語。

 

「私が、自分に名付けたのは、少し不在。私は、どこにいても、そこに執着できない。誰のことも、好きじゃない。誰とも繋がれない。なのに、中途半端に人と触れたがって、だからいつも、見苦しいし、息苦しい。どこの場所でも、生きていけない」

 

謎が明かされるラストで思わず涙〜少し不思議な物語〜

 ネタバレになるので、ストーリーの詳細は書きませんが、終盤、私は二度泣いてしまいました。1つは理帆子の母の言葉で。もう1つは謎が明かされた終盤で……。

 孤独を感じてひとりぼっちだった理帆子を照らすあたたかい光に、もう涙うるうるです。ああ、よかった……と思いました。理帆子はもう1人じゃない。孤独の殻を打ち破ることができたんだ、と。

 それはかけがえのない深い深い愛情が導いた結末で、そのくだりを読み進め、本当に感動しました。

 

「22世紀でも、まだ最新の発明なんだ。海底でも、宇宙でも、どんな場所であっても、この光を浴びたら、そこで生きていける。息苦しさを感じることなく、そこを自分の場所として捉え、呼吸ができるよ。氷の下でも、生きていける。君はもう、少し・不在なんかじゃなくなる」

  

 作品としては、謎や伏線の回収が巧みだなと感じました。途中から、伏線は何気なく示唆されていて、もしかして……とは感じていましたが、それらがうまい具合にラストで収束しているんですよね。

 理帆子がどうなっていくのか、理帆子を取り巻く別所あきらやお母さんや郁也らは……❓

もう続きが気になって気になって、後半は一気に読んでしまいました。

 そして、ラスト。うまい‼︎ 確かに「少し不思議な物語」です。凍りのくじらのエピソードもこう繋がるのかと。謎が解けてすっきりし、大人になり写真家になった理帆子のプロローグの場面に戻ったエピローグで、理帆子のその後がわかり、よかったよかった……としみじみしました。

 

おわりに〜辻村深月さんの作品を読んでみたい〜

  『かがみの孤城』、『凍りのくじら』と2冊の辻村深月作品を読みましたが、とても面白かったです。思春期の少女の内面の描き方がうまいなと思いました。また、ちりばめられたミステリの回収が物語の筋というか主題と合っていて、物語がどうなるかワクワクドキドキさせてもらいました。

 そして、2冊とも感動して泣いてしまいました。悩みを抱えている少女が他者の助けや影響でそれを乗り越える話にうるうる。

  他の辻村深月作品も読んでみたいと思います。

 

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)