ちょっぺこ日記

日々雑感や本の感想などを綴ります。

「羊と鋼の森」宮下奈都

 今月初めに読んだ宮下奈都さんの『羊と鋼の森』。大雪騒動で感想をアップできていなかったなぁと思い、感じたことを簡単にメモっておくことにしました。

 

(なお、豪雪は多少は落ち着いてきました。除雪した雪で二車線の道路が一車線になっていたり、バスはまだ運休していたりと雪の前の生活に完全には戻っていませんが、とりあえずスーパーで物は買えるようになりましたし、宅急便や郵便も届くようになりました^^。多分、雪が完全になくなるまでには、春を待たねばならないでしょうが…ま、自然のなすことですから、仕方がないですね)。

 

 さて、この豪雪を同じ県内で味わっているであろう宮下さんの『羊と鋼の森』ですけど(笑)、面白かったです。ピアノの調律師になった青年の成長が丁寧に描かれた作品。

 静かな森を思わせる静謐な文章が印象に残りました。これは、という大きな事件は起こりませんが、主人公の心情やピアノの調律を巡る出来事を丁寧かつ美しい比喩で表現していて、吸い込まれるような気がしました。

 作者が実際に北海道のトムラウシ村で過ごしたときに執筆された作品ということで、以前読んだ『神さまたちの遊ぶ庭』に通じるものもあり、そこも興味深かったです。セットで読まれると面白いかなと思います。

 

 

 ホールでたくさんの人と聴く音楽と、できるだけ近くで演奏者の息づかいを感じながら聴く音楽は、比べるようなものではない。どちらがいいか、どちらがすぐれているか、という問題ではないのだ。どちらにも音楽の喜びが宿っていて、手ざわりみたいなものが違う。朝日が昇ってくるときの世界の輝きと、夕日が沈むときの輝きに、優劣はつけられない。朝日も夕日も同じ太陽であるのに美しさの形が違う、ということではないだろうか。

  比べることはできない。比べる意味もない。多くの人にとっては価値のないものでも、誰かひとりにとってはかけがえのないものになる。

 

才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。 

 

 

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)