職場の上司がよくこんな風に言ってるのが耳に入る。
「普通はこんなことしない。普通は!」
大体、他者の言動を非難するときに発せられる言葉なのだけど、いつ聞いても「普通って何だろう?」と不思議な気がします。
普通はこんなことしない
普通は皆、同じなのかしら。
そこで会話する相手が「普通」の基準を共有していると信じているからこそ言える言葉…かなと思う。
普通はこんなことしない、はよくわからない。
俺はこんなことしない、ならわかる気もする。
前者は多数派は、皆は、世間は、を前提にしてる言葉で、後者は自分だけを前提にしてる言葉のような。
太宰治の『人間失格』で主人公の友人が「これ以上は、世間がゆるさないからな」と言う場面がある。
それに対する主人公の考え方がふむふむと頷けるのです。
世間とは、いったい、何の事でしょう。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。
「世間というのは、君じゃないか」
という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
概ね「普通は」という言葉もそのようなものなのかもしれないなぁ、なんて思いながら、仕事を進めるのでした。