感想…というか、支離滅裂なメモなんですが、メモっておきます。
主人公のみのりは40歳前後の女性。
物語は3つの話が交互に語られていく。
1つ目のパートは2019年のみのり(38歳?)。
2つ目のパートは1999年のみのり(18歳)。
そして、時折、戦時中、徴兵された男性の物語。
自分には、才能や使命感がないからと新しい境地に踏み出すことに臆病になり、現状維持で立ち止まっているアラフォーのみのり。けれども、若いころのみのりは希望や向上心に満ちている。一体、彼女に何があったのか?
それが物語が進むにつれて徐々にわかっていく。18歳から始まった物語が進んでいくからだ。そして、同時に2019年から始まった現在のみのりの物語も2020年まで進む。東京オリンピックのこと、コロナのこと、私たちが実際に経験した世の中の出来事が物語として描かれている。
(それにみのりは今の自分と同世代なので、若いころのみのりの物語に出てくる話…アメリカの同時爆破テロや東日本大震災やらの出来事、それに対するみのりたちの考察なども興味深く読めた)。
みのりに何があり、何を考えて、最終的にどう考えるようになるのか。それももちろん、興味があって、続きが気になりページをめくったのだけど、この物語に欠くことができないのが、みのりの祖父・清美の物語だ。
この祖父の存在がとても大きい。祖父が感じてきたことと、みのりが感じたことがリンクしている。みのりがラストで踏み出せたのは、祖父の存在があったからだろうと思う。
特に物語全体が悲劇があるわけでも、劇的な何かというわけでもないのだけど、ラストの方でぽろぽろと涙が流れた。戦争物を読むこともあるし、そういう物語で直接的な悲劇が描かれて、涙することはよくあるんだけど、直接ではないのだけど、色々考えさせられた。みのりの悩みや迷いや考えは、同じ時代を生きた自分にもわかる部分も多かった。
もやもやとした気持ちを丁寧に掬い上げ、言葉にしてくれてるような…。
何だかんだと面白くて、結構、分厚い本だが、一気に読み進めることができた。
「兵隊になる子どもたちだって、私たちとぜんぜん違う、かわいそうなだけの子じゃない。私たちだって、生まれた場所が違ったら、生まれた時代が違ったら、おんなじふうになったかもしれない。私は、そこから考えなきゃいけない。正義がひとつだって思っちゃいけない。私がここで生きていたらどうしてた? そっから考えなきゃって思ったの。政治のことがわからなくても、宗教対立がわからなくても、わかんないからって無視しないで、わかんないわかんないって迷いながら書けばいいんだって」(p334)
「すごくきれいなものと、すごくおそろしいものはつながっている。私は翔太の写真を見てそう思った。一点の疑いもなく心の底から神さまを信じるきれいな気持ちは、そのまま、ものすごくおそろしい武器になる。一心に祈るひたむきな気持ちは、他者を殺したいほど憎む気持ちになる。それは分かれてなくて、つながってる。あの写真を見て私ははじめてそのことに気づいた」(p337)
だれも彼も何かしたらのなんということのない義務感に突き動かされ、それに従っていて、それがつまりはそれぞれにあたえられた使命であり才能だ。(p438)